心の在り方 R&D

物も情報も不自由なく取得できる時代なのに、心は晴れずなかなか幸せになれない。心穏やかに少しでも心豊かに生きていけるようにしたい。

結婚するつもりでいた人に振られた

先日、結婚するつもりでいた人に振られた。

 

 早い段階からこの人と結婚したいという思いが湧き上がり、積極的に好意を伝えアプローチした。人生で初めて言葉にした「結婚するつもりで、付き合ってください」という申し出に、嬉しそうな表情で首を縦に振ってくれ、「よろしくお願いします」と言ってくれた。そのときの表情と、自分の体の芯から熱くなるような喜びは忘れられず、今でも簡単に鮮明に思い出せる。心の底から嬉しかったのだろう。毎日のようにLINEをし、週末は一緒に出掛けた。それまでも色々な話をしていたが、付き合うようになってからは益々結婚のことや子供のこと、これからの人生設計など踏み込んだ話もするようになった。相方も結婚のことを真剣に考えてくれていたように思えたし、少なくとも自分はそう信じていた。未来に希望を持て視界が開けたような感覚は、「幸せ」という言葉にふさわしい非常に心地良いものであった。

 

 それからわずか半年弱。ある時を境に急激に冷たくなり、事務的な口調で淡々と別れの言葉を告げられることとなった。「結婚するつもりで」って言ったじゃないかと恨みたくなる気持ちが無いと言ったら嘘になるが、本当に恨むべくは、相方を惹き続けられなかった自分の力不足である。振られるということは、それだけの理由があったからのこと。決して自分は被害者なんかではなく、自分に魅力が足りなかったことに他ならないのである。

だが、それが事実なのであるが、そう簡単に現実を飲み込むことができず、ただただ呆然とするしかなかった。何十年も一緒に過ごすつもりでいたのに、自分の人生をかけるつもりでいたのに、あまりにもさくっとした呆気なさすぎる幕切れに脳が全く追いついていかなかった。

 

 それからしばらくの間、人生で初めて、これが精神崩壊かと思わざるを得ない現象を味わった。ご飯は食べられず、うまく寝ることもできず、普段とは明らかに違う違和感のある呼吸の仕方になった。でも頭の中は覚醒状態であり、いくら仕事や勉強をしても疲れもしない。時間の感覚がよく分からなくなり、時計を見てびっくりするようなことがあれば、恐怖心が無くなりすぐ側を猛スピードの車が通っても全く怖くなかったりもした。ボロボロの状態であってもトラブルが生じたら冷静でいられる理性が残っていれば、臓器がおかしくなってる?と思うような場所が痛んだりもした。思考がさっぱり纏まらなくても現実を受け入れる他ないが、相方と出会ってからのことを思い出さないように脳の端へ追い出し続けたら、その期間のことが空白となったかのような錯覚を覚えた。頭の感覚を強制的に捻じ曲げるような奇妙な体験もまた初めてのことであった。

人間の防衛反応だろうかと思うような、体の感覚や機能、認識がぶっ壊れたような心身共に異常な日々を過ごしていたが、それでも時間という薬が少しずつ正常な状態に戻していってくれた。

 

覆水は盆に返ることはなく、割れた皿も元の状態に復元することはない。

 現実はなかなか厳しく、ひたすらしんどいとしか言いようがない。それでも落ち込むだけ落ち込んだら、再び前を向くしかない。今度また心惹かれる方と出会えた時に、その時は相手を魅了できるように自分を磨くしかないのだ。結局、今自分にできることは、今回の経験を無駄にせず糧にすることだけである。奇跡的に素敵な人と出会えた時があったように、また良い人に出会える日だってきっとくる。海路の日和が来たときに、そんなこともあったなと笑い飛ばしてやろう。